ニオイや体への害が少なく、火も使わない。
紙巻タバコのデメリットとされる部分を徹底的にカバーし、社会に受け入れられることを目指して誕生した加熱式タバコ。
発売当初は喫煙者たちも「加熱式タバコなら喫煙OKという風潮になるのでは」と期待に胸を膨らませたが、現実はそうならなかった。
結局社会が下した決断は「加熱式も紙巻もしょせんはタバコ」というものであり、現在タバコを愛する人間は皆、まるで隠れキリシタンのようにコソコソと喫煙している。
確かに加熱式タバコでも、タバコはタバコだ。
ニオイや害が全くないとは言えないことは重々承知している。
しかし、加熱式タバコユーザーがここまで迫害され肩身の狭い思いを強いられる理由は、果たして本当にあるのだろうか。
そもそも、タバコで肩身の狭い思いをしている人が「なんか腑に落ちないなあ」と思う理由の一つに、酒の存在がある。
個人差はあるが、飲むと気が大きくなり、時には人に迷惑をかけた挙句「何も覚えてない」と言うことができる酒は、他人に迷惑をかけるリスクの高い嗜好品だ。
事実、深夜の駅にはよく酔っ払いが落ちているし、朝方の繁華街では昨夜の酒による粗相の痕跡がそこかしこで見られる。
それでも社会が「お酒の失敗くらいあるよね」と温かく受け入れる理由は何なのだろう。
酒よりもタバコが嫌われる理由として、「タバコは体に悪いから!」という意見もあるが、喫煙者がこれだけ減ってもガン患者は年々増えている。
もちろんタバコが発がんリスクを高めることは承知しているが、急性アルコール中毒やその他病気発症のリスクがある酒と比較して「タバコは体に悪い」と言われても、どうしても素直に頷けない。
あとは「煙やニオイがイヤ」という声。
確かにこれらはタバコだけに存在する特徴で、迷惑をかけていると思う。
でも、だから加熱式タバコが生まれたわけで。
完全にニオイも害もないのかと言われればそうではないが、できるだけ迷惑をかけないようにしようとする想いすら受け止めてもらえない現状は少し悲しい。
これは単にタバコが好きな人もいれば嫌いな人もいるというだけの話なので、「タバコが嫌いです」という人を批判したいわけではない。
そしてこれは、恐らくほとんどの喫煙者が同じ気持ちのはずだ。
しかし、「タバコが嫌いです」という人の意見を受け入れるのだから、「タバコが好きです」という我々の声ももう少し聞き届けてもらえないだろうか。
このままでは、せっかく社会に認めてもらうために生まれた加熱式タバコだって報われない。
特に最近の嫌煙ブームはまるで、少数派を排除して楽しいタチの悪いいじめっ子を見ているような気分になることがある。
JTのCMではないが、吸う人吸わない人ともに生きやすく、歩み寄る心を持つ人間で溢れた世界になればいい。
記事:どぶのごみ子