ハームリダクション 海外と日本の違いについて
みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
多くの方々が、コロナ禍で思いっきり発散することのできない毎日に対して
ストレスを抱えているではないか、と思います。(私もそうです)
人間はストレスを感じると、それを解消することを本能的に求めているんです。
その例として、お酒、スイーツ、コーヒー、タバコなどの嗜好品があります。
こうした嗜好品は、楽しむことに法律的に問題はなく
コロナ禍にある今日の社会にとっては必要不可欠なものと言えます。
しかし、こうした嗜好品はメリットだけでなくデメリットも存在します。
知らず知らずのうちに大量に摂取し、
カラダに害を及ぼしてしまうという可能性もあります。
現に、世界では嗜好品の過剰摂取によって
命を落としてしまった人たちが多くいらっしゃいます。
関連記事:ギャンブル依存者に有効なハームリダクションという考え
日本では、嗜好品によって体に害を及ぼす場合
医師はその嗜好品の使用を禁止すること指示することがほとんどです。
一方、海外では嗜好品の摂取がやめられない人に対して
無理にやめさせるのではなく
自分のできる範囲で使用量を減らす「ハームリダクション」
という考え方が広がりつつあるんです。
改めて、ハームリダクション
という言葉を初めて聞いた方にご説明すると
「harm(害)」を「reduction(減少)」させる
つまり「健康に与える悪影響を少なくしよう!」という考え方です。
今回はこのハームリダクションが
どれほど海外で広まっているか
その必要性について、海外と日本を比べつつ
紹介していこうと思います!
ではさっそく、ハームリダクションが
いかに世界で認知されているのかについて紹介しますね。
世界を見渡してみると・・・欧米で広く認知されているようです。
その事例としてまず、カナダでの薬物依存者への対処法が挙げられます。
日本での一般的な薬物依存者への治療法としては、
通院しながら行う外来治療が基本で、
薬物依存症を
「薬物使用を禁止し、自分自身をコントロール」
できるように厳しく指導します。
今回取り上げるカナダでの薬物依存者への対処法は
180度異なります。
その方法とは、
「止めさせるのでなく、薬物を一定量摂取しながら
徐々に徐々に体と精神のバランスをとりながら薬物の使用量を抑える」
という治療法です。
具体的には、カナダのバンクーバー市にある“インサイト”
という公営施設で行われていますが、
薬物摂取で問題になっている注射針の使い回しを回避するために、
清潔な新品の注射針を用いて、
体に害を与えないよう安全に薬物を必要に応じて
医師が摂取するということが公然と行われているのです。
薬物依存者に対して、
日本では考えられない治療を行っているカナダのバンクーバー市ですが、
カナダ以外に国をあげてハームリダクションを取り入れている国があります。
それは、オランダです。
関連記事:ハームリダクションとは何か?事例とその効果を詳しく解説
皆さんはオランダと聞いてどのようなイメージが思い浮かべますか?
風車や豊かな牧場が想像できるオランダですが、
実際はソフトドラッグ大国とも言えるんです。
ソフトドラッグとはコカインなどの危険性が高いドラッグではなく、
マリファナなどの比較的危険性の低いドラッグを指します。
具体的にどのような政策をオランダが取っているかというと、
厳しい政策によって薬物を国内から完全に排除することは
不可能であることを前提に、薬物使用は
犯罪ではないという判断を下していたのです。
日本国内ではもちろん薬物使用は完全に犯罪であり、
時に私達がよく知る有名人も
薬物使用の疑いで逮捕されているのをテレビで見かけますよね。
こうしたハームリダクションを取り入れた
日本では考えられない取り組みが、
カナダ・オランダで行われているのですが
これは一部の国に限ったことではないんです。
というのも、オランダやイタリアを含む
27カ国が加盟しているEU全体も
2012年までの「EU薬物行動計画」で積極的に
ハームリダクションの考え方を積極的に取り入れているんです。
欧州でハームリダクションが大きく浸透したきっかけとなったのは
1980年代に急速に感染が拡大したエイズウィルスです。
そもそもエイズの感染が拡大した経緯は、
欧州で大衆に広く使用されていたヘロインを摂取する時に使う
注射針を不特定多数の人で使いまわしていたことが原因だと言われています。
この公衆衛生上の問題とハームリダクションは利害が合致する点が多く、
欧州全体で認知されるようになったのです。
ハームリダクションの認知拡大するきっかけとなったのは、
先程取り上げたエイズではありますが、
その後欧州に限らず世界規模で認知が
拡大している要因はなんだと思いますか?
筆者の想像ですが、誤解を恐れずに言うと
ハームリダクションという今までにない“あいまい”な考え方
にあったのではないかと思います。
今までの解決方法は、止めるが『善』で止められないが『悪』でしたが、
止められないという人のことを理解し、せめて
体に害を与えない方法を一緒に模索しようとするという、
今までにない新しい考え方にあったのではないかと思うのです。
薬物以外にも、私達にも馴染みの深いコーヒーやアルコール、タバコなど
止められない方の立場になって考えて行くと新たな解決策が見つかるはずです。
人を縛り付けるのではなく、できるだけ開放をする。
今までの世界は白か黒か決めすぎてきたのではないでしょうか。
だからこそ、ここまで世界はハームリダクションを理解し受け入れ
浸透してきているのではないかと筆者は思います。
日本ではどうでしょう。
まだまだハームリダクションは浸透していなのが現実です。
その事実が顕著に現れている例として、
タバコをやめられない人に対する治療法が挙げられます。
海外いくつかの国では、国をあげて紙巻きたばこから加熱式タバコなどに変えて
健康被害を少なくするというハームリダクションを取り入れた
取り組みが行われていますが、日本では、
タバコを辞めたい人には常に
自制心を持って我慢するのが最善策だと考えられており、
治療中の喫煙が許されることはありませんでした。
その結果、一定期間禁煙ができたとしても、
我慢をしてきた反動からまた喫煙してしまうケースが多々あります。
もしかすると、読者の方も経験したことはあるんじゃないでしょうか?
私の身の回りにも禁煙に失敗する人が多く、中には数十回と禁煙に失敗する人もいます。
関連記事:ハームリダクションの現状とは?海外と日本の違いも解説|カナダの実例紹介
このように、治療を行い一時的には止めることができても
結果として再発してしまいさらに悪い方向に向かってしまった
という例をみると、諸外国に比べ、日本はまだまだ
ハームリダクションの考え方は広がっていないどころか
知られていないのが現実ではないでしょうか。
ハームリダクションは、今後ますます世界中で注目されると思われます。
日本もまたハームリダクションという考え方を率先して取り入れるべきで、
我慢できない人に対して無理に我慢させるようなこれまでの日本のやり方は
結果として再発、もしくはストレスがたまるばかりで、
問題の解決にはなっていないことがほとんどです。
バブルがはじけて以降、不景気が続く中
日本の社会はダメと決めたらダメ、と
厳しくなりすぎているんじゃないかと思います。
その延長線上にネットでのいじめや炎上もあるのではないでしょうか。
(ちょっと発展しすぎでしょうか)
受動喫煙や喫煙自体のリスクが懸念されている今、
スモークレスで体にもやさしい加熱式タバコは最適であり、
今後注目されるべきだと思います。
加熱式タバコに限らず、
ありとあらゆる角度・方面からハームリダクション
という今までになかったいい意味での“あいまい”を
取り入れるべきではないでしょうか。
そうすることで、お酒やタバコなどの嗜好品との付き合い方も
次第に改善するだけでなく、
日本社会全体の『カド』がとれて、
本来そうであったように和を大切にする社会になると私は信じています。
*ハームリダクション という言葉が今、トレンドワードとして注目されています。
『ハームリダクション』とは?